城繁幸を聞く


平成28年2月24日横浜関内ホール
神奈川県社会保険労務士会研修委員会主催
平成27年度第3回必須研修会
 
テーマ「日本の労働市場の課題と若者の意識の変化」
講師  城 繁幸氏


1、二重構造

一定の規模以上の企業では、人を卒業年次で管理する年功序列的な考え方が残っているため、基本的に新卒以外を採用しない。
多くの企業では、「正社員を核としながら非正規雇用で人件費の調整を行なう」というモデルが90年代にでき上がり、現在もそれに添って採用戦略や労務管理が組まれてしまっている。
コア業務は正社員、それ以外は非正規社員の「業務の切り分け」がなされている。
「長期雇用の正社員は宝物」という“ものづくり型”の考え方が、いまだ根強く残っている。
正社員を守るため、単純作業は有期の非正規雇用に任せ、非正規によって賃金調整を行なうという考えが根底にある。

 そういう切り分けや人材管理の方法はあってもよい。
問題なのは、コア業務が一部の人に集中しがちなため、それ以外の業務を行なう人との協力関係が全くなくなってしまい、事実上の「身分制度」になってしまっている。

日本の競争力
清潔度         世界1位
水のうまさ、安全性  世界1位
対人口の病院数   世界1位
鉄道の質        世界2位

解雇の難度      世界1位
雇用/解雇コスト 130位  


2 形骸化する終身雇用⇒大卒の5割は一生平社員

終身雇用というのは長くいればいるほど賃金が上がると労働者が期待した結果に過ぎない…
終身雇用を成り立たせているキーポイントは、生産性以下の賃金で満足してくれている優秀な社員がいることだった。
社員の賃金カーブは結局平均値での集計。平均以上に稼いでいる人が平均値近くの賃金でも頑張っているから、その賃金水準以下の力の人を終身で雇用できた。

残るメリットがない以上 流動化するのは当然である…
今やその優秀層が転職し始め、我慢しなくなってきている。
わかりやすい例がアナウンサーだ。
そんな安月給ではやっていられないと、各局のエース級があっさり辞める。
フリーになって収入が3倍に増えたという例もある。
組織としては稼ぎ頭に辞められては困るので、賃金体系を変えねばならない。
導入に緩急の差はあるが、それが産業界でも起きている。
賃金制度自体を抜本的に見直さざるをえないのだ。結果として、終身雇用は今のままでは続かない。


3、無法地帯化する企業

日経の「就職人気企業上位225社」のうち、60%以上の企業で、国の定めた過労死基準を越えた残業が可能となるよう労使が協定を結んでいる。

トップの大日本印刷なんて年1900時間残業がOKだから、月換算で160時間弱の残業が(合法的に)出来てしまう計算になる。
過労死認定基準が月100時間残業だから、これならいつ誰が死んでもおかしくないだろう。

残業については月45時間までという上限は一応あるけれども、労使で協定を結べば青天井で命じることが可能となる。
組合のある企業はたいてい、労使で年1000時間以上の残業が可能なように取りきめている。

最初に“ブラック企業”という呼び名を考えた人はなかなかキャッチコピーの才能があるなと考えている。
というのも、違法ではない以上、法律違反企業とか犯罪企業とは呼べない。
でも“ブラック企業”なら、違法とは断言していないから訴えられるリスクも無い上に、なんとなく悪そうなイメージも打ち出せる。
マーケティングセンスは中々のものがある。

日本の会社は3つに分類できる。

①終身雇用はたぶん保証される合法的ブラック企業(おもに大企業)

②合法的ブラック企業だが、実は終身雇用も怪しい企業(大多数の中小企業)

③ヤクザが経営関与しているようなリアルブラック企業

ユニクロことファーストリテイリングだが、同社は月80時間、年960時間程度の残業上限を設定しており、上記ランキングの中では全然マシな方だ。
NTT各社やソニー、任天堂、IHIなど有名な大企業が月200時間であったり150時間といった協定を結んでいることを見たあとでは、月100時間程度の時間外労働は当たり前、月80時間が標準であるように思えてくる。

立派な労組のある他の大企業が組合員を過労死基準オーバーで働かせる協定を作る一方、労組すらないユニクロがそれより少ない残業時間に抑えようとつとめているのは、なんとも皮肉な話だ。
だがそれこそこの問題の本質をあらわしている。
“ブラック企業”とは労使の共同作品のようなものなのだ。
雇用問題においては右と左は一つ屋根の下
労組対立という虚構がある…
同社の5割近い離職率についても、小売業全体の数字が44%という点を踏まえるととりわけ高い水準とも思えない(大卒3年内離職率)

4若者の意識の変化

就職人気企業ランキング

1990年
文系①日本電信電話 ②ソニー ③三井物産 ④三菱銀行 ⑤東京海上火災 ⑥三和銀行
理工系①ソニー ②日本電気 ③日本電信電話 ④東芝 ⑤ 松下電器産業 ⑥日立製作所

2014年
文①JTB ②全日本空輸 ③エイチ・アイ・エス ④日本航空 ⑤電通 ⑥博報堂
理①カゴメ ②トヨタ自動車 ③味の素 ④JR東日本 ⑤明治グループ ⑥三菱重工業

週刊東洋経済から
今最も人気ある会社=サイバーエージェント、グリー、DeNA  3社とも大卒平均31歳年収750万円!

若者は脱終身雇用、脱大手企業
自分が最大限成長でき、労働市場価値を高めてくれる場所を選ぶ傾向あり

卒業して10年ほど経つと、同じ大学の同級生であっても、大きく差がついていることに驚かされる。
ここでいう"差"というのは、必ずしも年収やポストではない。
30歳前後と言う年齢は、将来に向けた人生の投資時期であり、単年度の年収どうこうというのではなくて"人間力"というようなものに、ものすごい差が生じているのだ
アンテナの高さの差である。
流暢な会話をしていたビジネスマンたちはもはや年功序列も終身雇用も保証がない時代だということをよく理解し、必要なものは自力で身につけるべきだと考え、実際そうした努力をしている。
新聞はもちろん経済誌や書籍を読み、必要な専門書も購入し、切磋琢磨しているわけだ。

一方で、"ビール人"たちは、「良い大学を出てそこそこ有名企業に入ったのだから、もう大丈夫だろう」と安心し、会社で言われたことしかやろうとしない。
余暇に生産的な何かをするなんてこともなく、淡々と与えられた仕事をこなしているのだ

中央大 竹内教授語る
東大生が増えると会社が傾く…
城先生曰く
出版界に多い東大卒=大不況の現況=そつなく淡々しかし覇気がない。90年代の社員は本を読むに読んだ…

5、求められる対応:メリーチョコレート

能力が高くちゃんと成果を上げた若手を優先的に昇格させ、能力がそれほど高くない管理職を降格していけばよい。
 また、降格まではしなくとも、シニアマネジャーや担当部長、役員直轄などという名称で、本流のラインから外すことも1つの方法だろう。

 それが難しければ、給与などの「処遇」と「序列」を切り分けて運用する方法もある。
これは、現行の法制内でできる非常に有効な方法であり、メリーチョコレートなど実際に採用している企業もある。

 メリーチョコレートでは、30歳の若手が工場長のポストに抜擢されている。
工場長は本来なら役員待遇のところだが、彼の場合は基本給に多少の手当てが上乗せされ、職位が少しだけ上がるだけだった。
そこで、成果を発揮した場合は、一時金が上乗せされる方式になっている。これは、組織全体の新陳代謝を促すことにつながっているようだ。

――雇用制度や人事制度を改革していくなかで、参考となるのが外資系企業だ。
外資系企業では販売なら販売、広報なら広報と、特定のセクションの専任社員として入社する。つまり、自分の所属する事業の撤退を会社が決めれば、非常に優秀な社員でもリストラされてしまうというリスクがある。
規制緩和をしていくなかで、日本もここまでドラスティックな改革をやる必要はあるのか?

 私は、規制を緩和することが重要であって、解雇などの実施は各経営者が決めればいいだけのことだと考えている。
解雇規制を撤廃して、金銭解雇を認めるようになっても、おそらく今までと何も変わらないだろう。
社員を解雇するにも、ある意味「才能」が必要だ。“サラリーマン”が多い日本の経営者には困難だろう。

 そんななかで、今後最もドラスティックに変わっていくと思われるのは、採用だ。
自分たちで雇用関係を整備できるのであれば、派遣社員ではなく直接雇用を行なうようになる。
実は、派遣業界が雇用流動化に対して一番抵抗しているのはそのためだ。

 もし職能制が採用され、採用のハードルが下がれば、中高年、フリーターなど色々な立場の人にチャンスが生まれる世の中になるだろう。

年功序列と二重構造による問題を解決するには、どうすべきか?

 仕事によって給与が決まる「職務給」と「年俸制」にするしかない。
そして成果については、ボーナスで大きく対価を上乗せする形にすべきだ。
これまでの「生涯賃金で人を雇う」という発想を切り替え、「1年ごとに適正な対価を払う」という仕組みにしなければ、公正さは担保できない。

 また、職務給にすることで賃金の弾力性が高まり、転職がしやすくなるため、人材の流動化も進む。このメリットがあるのは、若年層などの一部の人間だけではない。50代などの中高年もそうだ。
これは幅広い層に影響を与えるにもかかわらず、ちゃんと認識されていないのが問題だ。

 恐らく認知度が低いのは、日本人の“労働実態”に対する意識が低いからだろう。つまり、「どこの会社に勤めるか」に重きが置かれがちで、「何の仕事をやるか」という契約の概念がない。
リーマンショックのように、目が覚めるような出来事が今後も起きたら、そのときこそ彼らの意識に変化が起こるだろう。




研修会はこの後第二部に移り、松山大学法学部教授 村田毅之氏による「個別的労使紛争処理制度の展開」についてお話いただいた。
村田教授の報告は次の機会に発信したい。
研修しても研修しても労働保険法、社会保険法の世界は追いつかない。
これは今の世界が2年でひっくり返るほど大きく流動しているからの他ならない。
10年後20年後は……


制作発信 社会保障・安全衛生コンシェルジェ 特定社会保険労務士 金丸亜紀雄

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