マッカーサーに作ってもらった日本の労働組合…だから脆かった…労働環境悪化の今こそ再構築を

労働組合は、標準的な言い方をすれば、労働者が労働条件の維持改善、社会的な地位の向上を求めて組織する団体である。
英国人ウエッブは、その著「労働組合運動史」において、生活条件を維持、改善するための賃金労働者の持続的団体と定義した。

にも拘らずそんな大切な労働組合の組織率は現在約19%である。その鍵はこの著書に!

中央公論社発刊  久米郁男著  「労働政治」を読んで


1994年、米国コーネル大学で労働政治研究という学問領域を知った著者は、研究と正に同時進行で、1989年800万人の労働者を組織した日本労働組合総連合会(連合)の誕生を目の前にする。

従って本題は、連合を中心に1000万人を擁する日本最大の利益団体として労働組合の活動が、日本の政治にどのような影響を与えているかに焦点を絞っている。

しかし、この著書で私が一番印象深く、また目からうろこのように労働組合の最近の状況に一つのヒントを与えてくれた事項は、第3篇「戦後史の中の労働組合」であった。

労働組合の歴史と衝撃の事実

明治30年1897年労働組合既成会が結成さる。…国家によって認められない非合法の存在からスタート。政府経営者からの妨害、弾圧を受けながらの苦難の事業でもあった。

第二次世界大戦下のおいては更に様々な法律による規制があり、弾圧も強化された。
1937年労働組合組織率7.9%

そして終戦
1945年10月 占領軍指揮官マッカーサーによる民主化5大改革として、労働組合の結成が奨励された。天の指令としてそれも急速緊急な結成が求めれたのだった。
産業別、職層別など諸外国に見られる労働者の声を真に吸収する全国レベルの組合を組織するには余りにも時間がなかった。
その結果皮肉にも戦時中戦争動員のための「各企業内で労使協調を旨とする産業報国会」が基礎になり、多くの組合は企業別組合として出発した。
戦後民主化の進展もあり急速に組合が、本来あるべき産業別職層別横断組織ではなく、極めて日本的に企業内組織として組織化されて行ったのである。


1945年12月 3%
1945年 55.8%と急増   正に外圧で急成長した労働組合組織の歴史である。
1950年代にはしかし30%と低下、その後一貫して低下し続けている。

2004年 組合員数1031万人 推定組織率19.2% 
       大企業では50%維持、中小企業では15.8%、99人以下では1.2%である。
恵まれた労働条件下で働く労働者の方が組合を確保し、むしろ労働条件や環境に問題を抱え,組合が必要と思われる中小零細企業の方で組織率が低下しているのである。


組合組織率低下要因の分析

①産業構造の変化:就業構造の変化
製造業主体からサービス産業への変化及び非正規労働者特に女性労働者の増加による就業が従来のプロレタリアート的労働者から大きくイメージを変えた。その結果組織率に大きな減少を来たした。
労働者の30%は非正規:第三次産業就業者は64%を占めている。

②集合行為問題
労働者自身が組合に加入する利益とコストを計算、フリーライダーを決めこむスタイルの増加

著者はこの2大要因が組合率低下の要因と分析されている。

私自身は更に③経済成長によりひとまず物質的には豊かになったこと、1億総中流意識
④あらゆる面で多様化、個性化が進んだこと
⑤リストラによって離職を余儀なくされた労働者が再就職した場合、圧倒的に非正規職員が用意されている事実=従って組合に入れないことも組織率低下の要因と考えます。
そして最大の要因は、⑥本書で学んだ、占領軍による日本統治の施策として労働組合が超短期間に組織されたという事実そのものだと確信したのでした。

民主主義:公共の福祉という概念そのものも戦後の占領軍から与えられたものでもあります。
国民が権力と戦い血を流し、勝ち取った民主主義でないのはまぎれない事実です。
労働組合も戦後直後は数%と壊滅状態だった。そこから時間をかけ、苦闘しながら築き上げて来た歴史があるならば、現状のような組織率にはならなかったのではないだろうか。


労使トラブルの解決は組合から個人へ

では、今の労働環境は組合がなくても済むような快適な環境であろうか。とんでもない。
リストラ、過重労働による健康障害、非正規労働、低賃金、更にはホワイトカラーエグゼンプション等々非常に厳しい、ある有識者によれば戦前に戻ったようか悪い労働環境にあるとも言える。

こんな時だからこそますます労働組合が必要ではなかろうか。それも強力な。
労使トラブル、紛争の解決に向けてのシステムは、組合が健全の時代は組合が担った。

しかし今は個人で会社や国相手に戦うしかない。個人紛争は激増している。
行政(労働局)で行うADRなど会社が応じなければそれまでである。
司法側で業を煮やして労働審判制度を平成18年4月から発足させた。個人で戦うことには変りない。

労働組合立ち直りに向けてのヒント

一つは組合への信頼:必要性の意識は依然健在であること
●連合の意識調査でも、組合に未加入の者の70%が必要性を答えている。
●OECD調査でも日本の組合への信頼感は中位に位置する。

二つ目は、中曽根行革と小泉構造改革の比較が述べられ、改革の実現度が中曽根がはるかに高いとのこと。その原因として注目されるのが、中曽根内閣は民間労働組合からの支持を強く求め連帯したこと。これに対し小泉内閣は改革に対峙する勢力に既得利権勢力、官僚、政治家、組合を据え、協力者に一般大衆世論に支持を求めたことである。
改革が実現するには、「可能性の技術」が必要であり、真に成果を上げるには政治的動員の成否にかかると著者は力説する。ここに労働組合の存在意義も意識されるのである。

法政大学教授金子征史氏はこの課題について、①組合員の労働能力の向上目指す研修を充実する取り組みを組合が持つこと。②社会保障へのアプローチという2側面から立ち直る道があると説いている。

労働組合は確かに存在感を弱めている。役に立つのかとも言われる。
しかし組合が経済合理的な路線をとるなら、経済社会の利益追求や社会全体の利益増進にも寄与し、且つ組合員メンバーの長期的利益にも貢献出来るであろう。
労働政治は今後も日本全体にとって極めて重要であると結んでいる。



制作発信 社会保障・安全衛生コンシェルジェ 特定社会保険労務士 金丸亜紀雄

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