終末医療を温泉と★☆★☆で苦痛なく楽しく過ごすサナトリウムの物語::薬剤の許されざる境界は?

伊豆修善寺温泉。
サナトリウムと言っても正確には病院形式に治療行為を行うのではなく、実態は湯治場だった。
色々と長逗留の患者はいた。
末期の癌患者。
炎症性腸疾患
長期の重篤な鬱病…
誰でも人生の最後は出来るだけ苦痛のないように終わりたかった。
そのような方々に、こちらのサナトリウムで温泉に入り、至福の時間を過ごしていただければこれに勝る喜びはありません。



静山社発行 霧村悠康著「境界」252ページ

「境界」の副題は{最終治療と謎のカプセル}である。
主人公は医者であるが本当の主人公はむしろ謎のカプセルにあるとの感想を持った。

最初に登場するのは35ページ、伊豆の温泉旅館で偶然女湯で死亡した女性の蘇生手当を施した医師が後に刑事の訪問を受ける。
その際病院診察室や薬剤を調べられる。
アンフェタミンは見当たりません
女性は高濃度アンフェタミンを飲まされていたのが死因だった。

アンフェタミンはわが国では危険薬剤として指定され製造販売が禁止されている。
しかし医薬品として米国、英国、豪州では認可されている。
手に入れよと思えば入ってしまう。

伊豆の温泉地に終末治療のサナトリウムが開設された。
ここが物語の舞台。
ある時期関東一円に覚醒剤アンフェタミン入りカプセルDHが出回る事件が発生したことがあった。
普通は結晶粉末だがミニカプセルを使用しただけに分かりにくく、首謀者のなりを潜めるのも早かった。
未解決のまま。


これが事件の伏線。

医師として何人もの癌末期患者を患取っている。
肉体の苦しみもそうだが心の苦しみはなおさら自分でなければ分からない、心の治療までは出来ないと、むしろ諦めている。
安易に励ますのは酷だと思っている。


ここのサナトリウムではゼイゼイと苦しがって息をする者が「いつ倒れたっていい、思い残すことない」…切れ切れの会話をしながら、顔はむしろ嬉しそうだった。
悩みのない表情。重篤患者とは全く見えない。

よろよろと背を向けて帰る患者を見ながらはっと思い当った。
精神と肉体の分離…アンフェタミン!


このサナトリウムは終末期の患者を集め悩みを治療する医療を行っている。
その治療法とは、温泉とアンフェタミン。
難しい治療だ、うまく処方すれば治療効果はあるが、違法の覚醒剤だ。
副作用、薬物依存も出てくるだろう。正気でなくなる患者もいるだろう。

人間が化学合成で作り出した覚醒剤。
恐怖心を拭い去り、自分は何でも出来ると錯覚させる。
だから戦争中、戦場の兵士に服用させて来た。
激戦地の恐ろしさを薬で感覚麻痺させた。
戦闘機の飛行士も疲労感がなくなり高揚感に満たされ敵機に向かった。
欧米いくつかの国ではうつ病対策として認められているが多くの国では禁止された。


薬は2面性を持つ。
肉体と精神そして社会の健全性を蝕む方が強ければ禁止されて当然だ。
問題は医療用として許可された国での薬剤横流しだ。


この物語の主人公も現在、厳重な管理の元、一部の限られた病院で、ある種の精神疾患に投与が許可されている。
不治の病、長期の苦悩。
病と付き合いながら普通に暮らしたい、普通に人生を過ごしたい、
もう一人の主人公医師が今まで考えたことのない治療の世界。

この物語のサナトリウムは明治26年に開設され、アンフェタミン治療が導入された。
治療効果は絶大だった。
DHカプセルのDHとは、身体は病んでも、心には光を当てたいと考え、このお薬はDRUG OF HAPPINESS、たくさんの幸せをもたらすものという意味でした。
薬を作るのも人間、使うのも人間、すべてはその人間の心次第なのですね…物語はこうして終末となる。

微生物、遺伝子、再生医療等現代医療の可能性と限界をテーマに活躍する現在勤務医でもある作者の異色医療ミステリーである。



アンフェタミン



アンフェタミンは明治20年にルーマニアの化学者ラザル・エデレアールが発明し、メタンフェタミン合成に成功したのは明治26年日本人薬学者長井長義によってでだった。



アンフェタミンは長距離トラックの運転手、建設業関係の労働者、工場作業員など、労働時間が長かったり不定期になりがちなシフト勤務者や、単調な反復作業を行う者の間でも広く使われている。

ホワイトカラーや学生もまた、長時間に及ぶ過密なスケジュールの間注意力を持続させるため、あるいは学習能力を向上させるためにアンフェタミンを使うことがある。
タイでは缶詰工場の労働者に対し生産性を上げる目的で強制的にアンフェタミンを投与した事例が報告されている
1960年代から70年代のイギリスにおいても普及しており、ビートルズも、デビュー前にハンブルクのクラブで夜通し演奏するためにアンフェタミンを服用していた。
また、晩年の力道山も衰えた力を隠すために服用していたことが田鶴浜弘(プロレス記者)の口から語られている
数学者のエルデシュはアンフェタミンを常用しており、服用を止めた時は研究がはかどらなかったという。


2003年4月、米空軍第183航空団のハリ-・シュミット少佐とウィリアム・アンバッチ少佐の二人がカナダの訓練部隊にレ-ザ-誘導爆弾を誤投下し、カナダ兵士4名が死亡、8名が負傷する事件がありました。

この事件を裁く軍事法廷にかけるかどうかを審理する際、弁護側は「カナダ兵士」を殺したのは、パイロットではなく、空軍が処方した覚醒剤「アンフェタミン」である」と述べています


米空軍によると、「アンフェタミン」の服用は完全に「自己責任」であり、薬を受け取ったパイロットが署名する「インフォ-ド・コンセント」の書類には服用が自由意志に基づくということが、明記されているそうです。

「地上勤務」即ち、飛行任務から除外されるということは、パイロットの戦歴に大きな傷がつくこととなりますので、薬剤を常時服用せざるを得なくなるのが実態だそうです。

太平洋戦争で米軍パイロットが服用していた「アンフェタミン」が、その後の「朝鮮戦争」「ベトナム戦争」「湾岸戦争」「イラク戦争」を通じ、60年もの間、攻撃精神を高め恐怖感を払拭させるため使用されて来たのであろうか。


…明日はもう一つのルーマニア発特効薬を発信します。
  

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