元皇帝フビライ汗の表情が恐怖にゆがんだ…鎌倉が放った諜報工作員朝比奈蒼二郎の小刀が眼前に

火坂雅志を読む④

今しかない、蒼二郎は小刀宗近を抜いた。同時に皇帝フビライ汗のいる玉座に向かった。
フビライ汗の大きな顔が手の届く近さにあった。フビライ汗の表情が恐怖にゆがんだ…


小学館文庫   火坂雅志著  蒼き海狼 718ページ

舞台は大都:現在の北京
蒙古:元の皇帝フビライ汗は中国:金朝を滅ぼすや、元の首都をここに定めた。
周囲33キロメートルの壮大な城郭都市が誕生した。当時世界最大の都。モンゴル人、ウイグル人、宋人、高麗人、ベネチア商人、世界中のありとあらゆる人々が出入りしていた。

蒙古軍の強さ、発展の秘密
● 騎馬軍団の整備:スピードで圧倒
● 新兵器開発:侵略国からテクノロジスト技術者を優遇取り込み、、兵器進歩に当たる。
● シルクロード経済の制圧、経済官僚を登用し東西交易からの富を支配

諜報機関工作員:朝比奈蒼二郎

鎌倉から送り込まれた諜報機関工作員:朝比奈蒼二郎の役目は、元による3度目の日本攻撃構想を調べることにあった。
海洋武士団三浦一族筆頭の和田義盛の子「朝比奈三郎」は蒼二郎の伯父であった。北条との内紛で故国を離れ失意のうち異郷耽羅島(済州島)で散った。蒼二郎はここで生まれた。

耽羅島は攻められ日本は守られた

その耽羅島は元による総攻撃を受けた。ここを拠点に二度にわたり日本攻撃を行った。
幸い2度とも台風のおかげで日本は救われる。もちろん鎌倉幕府の平頼綱の海商などから徹底した情報収集を行って沿岸一帯の防御塁設置など蒙古対策が功を奏したこともあった。


敵を知り敵に勝つ

この平頼綱が諜報活動切り札として送り出したのが朝比奈蒼二郎だった。あえて北条方にとっては謀反人である朝比奈一族の蒼二郎であるが、あまりにも武術に優れているところを見込まれたのだ。海に親しみ、武術に優れ宋語にも達していた蒼二郎は適任だが、彼の第一目標は日本攻撃船団の造船状況の把握。敵を知り、その毛筋ほどの隙を見出し衝くのが小国が大国に勝つ唯一の道。難儀で重要な任務を帯び単身渡る。


皇帝フビライ汗危機一髪
元軍の造船状況調査より、故郷耽羅島を滅ぼした憎い皇帝フビライ汗を刺殺した方が混乱し当面の日本攻撃もなくなるだろう。任務遂行にもかなっているのでは、迷った。

満州の日本攻撃船団造船廠発見
思わぬ邪魔がはいり皇帝フビライ汗暗殺に失敗した蒼二郎は満州に向かった。
二度の日本攻撃で木材は不足し、新たな造船基地として目をつけたのが満州だったのだ。
蒼二郎が必死で造船基地を探索しても見つからなかったはずだ。ここは壮大なる森林地帯だ。
蒼二郎は松花江で造船状況を見た。膨大な材木が集積されている。
蒙古軍火器の見取り図も確保し、日本の北端13湊経由でついに戻った。

知恵を使えば大蒙古に勝てる

二度の日本攻撃、占城(タイ)攻撃も要因は海軍の作戦失敗だった。
台風の影響もあったが、人災でもあった。航海術、天候分析など海に詳しい宋人などの進言を廃し、膨大な軍勢と長旅にさしもの兵糧もつき、あせった蒙古らしからぬ結果となった。

大越(ベトナム)に行く

農業国。中国と陸続き。海で懲りた元は陸路から大軍を送ることに。
1284年5月、皇帝フビライ汗は会議を開いた。
日本か大越か。彼は金銀の国日本に執着していたが、戦略将軍の多数は海路より陸路を主張した。総勢50万の軍勢が大越に向く。失敗は許されなかった。
そして蒼二郎は大越将軍陳興道に招かれていた。蒼二郎は思う。あの強烈な蒙古軍がなぜこの農業国の静かなる民に前は敗れたのか。将軍は言った。強い敵が来れば逃げるだけだ。
逃げ出して湿地に隠れていれば、蒙古が勝手に帰っていった。それだけだ。一滴の血も流してない。

蒙古敗退

今回の大越遠征でも大越軍は守っては退却又退却だった。しかい…雨季になって、さしもの蒙古軍に異変が起きた。マラリアである。5分の1が罹患してしまった。
兵糧も十分のはずだが、なんと勝手に流用されて底がついていた。高い価格で横流されたのだ。大越の高等戦術だった。またしても手痛い撤退を余儀なくされた。

そしてついに日本が標的になった。第三次攻撃だ。満州の造船所で制作された大軍船団が向かう。日本国最大の危機が迫っていた…。

またも海軍力で壊滅させられた蒙古軍

蒙古船団は3千石船主力に6百艘。日本に向かうはずだったが、戦略会議で大越優先に覆されたのだ。シルクロードの利権商人の意向が大きかった。
蒼二郎の進言した新作戦、大船に対して小回りが利き、燃えない青銅の小船投入が効を奏して蒙古軍は苦戦をしいらえる。
そして河口に向かう蒙古大軍船団は、大越軍の秘策潮の干満を利用した「杭の陣作戦」により致命傷を蒙ることとなった。あの大船団が殲滅させられたのである。
日本人朝比奈蒼二郎と大越軍は世界最強の軍事国家に勝った。
…静かで粘り強いベトナム人の持つ知略と全国民が一致してのベトコン戦術…最近のベトナムゲリラと米国近代軍との関係も偲ばせる物語だ。



日本、元、ベトナムが海で繋がれる。海は世界に通じる道なのに、海洋国家日本の実態は外敵を防ぐ天然障害にしてしまっている。島国根性。
しかし人間の英知の前には大帝国と言えども勝てない。それを蒼き海狼朝比奈蒼二郎が海風の匂いとともに繰り広げ実現させる壮大な文句なく面白い海洋小説だ。


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