患者を取り違えて手術…医療事故は原因を生んだ背景こそ考えるべき 「日本の医療に未来はあるか」を読んで

新米の研修医が診察しても、大学病院で有名教授が診察しても診療報酬は同じ金額である。
日本の医師は米国の医師の8倍の患者を診察し、医療訴訟で訴えられる確率は10分の1である。奇跡に近い精神力で診察しているのである。


ちくま書房発行 鈴木厚著    「日本の医療に未来はあるか」を読んで

昨日は同じ著者の1998年「日本の医療を問いなおす」を読んだが、今日は2003年著の本著は、医療現場が加速度的に悪くなっていく状況に激しい警告を発せざるを得ない鈴木先生の叫びの著作である。

第1章、第2章は、医療費が日本は欧米各国より格段に安価であること、そのしわよせが医療現場の超多忙に来てしまっていることを詳細に、図表化して解説している。
昨日の「日本の医療を問いなおす」にて概要を報告しましたのでここでは割愛します。

第3章日本の社会保障

この10年間欧米各国は社会保障費を増額した。
日本だけが4.1%→3.4%に減額させた。
米国2.9→4.8%
英国7.5→12.4%(ブレア公約1.5倍増)


公共事業費対社会保障費(国内総生産対比割合)

6.03.4
1.412.4
2.07.4
2.86.1
1.94.8

公共事業が社会保障より多いのは日本だけ

本当の構造改革は、無駄の多い公共事業や放漫経営企業救済ではなく、国民が望む安心と幸福のため、医療、年金、介護、福祉に投資をすべきです。雇用効果も大きい、新しい起業、発想が生まれる可能性高く、経済活性化に寄与するのは、北欧各国の例を見れば一目瞭然である。

第4章、医療周辺産業

医療費の31%は薬代。日本のクスリは卓抜した出費である
仏は20%
独は17%
英は16%
米は11%

大手製薬15社会社の総利益9千億円=医療費の3%=天下り先に製薬業界、官民癒着の構図=製薬業界は営業努力なく温室に=行政に守られた戦後倒産ない業界=新薬開発の国際競争から脱落=ファイザー1社で日本15社より多い開発費

官民癒着に守られたぬるま湯体質が製薬業界を脆弱にして来た。高収益が逆に経営戦略や世界戦略を考えてきなかった。

院内薬局と院外薬局
①欧米は普通院外
②だから院外にしよう
③欧米人が日本に来て感激したのは院内薬局(雨の日でも便利:やさしい)
④院外は院内より1,5倍高い(風邪クスリ院内890円院外2490円)
⑤院外は薬価差益を病院から排除した
⑥院外は医師の処方箋次第
⑦病院は営利排除:薬局は営利事業
⑧診療所から病院、調剤薬局の時代へ:医療現場は統制経済:調剤薬局は市場主義

第5章 医療現場

3時間待ち3分治療を行わないと、病院経営が成り立たない。
3分でも30分でも診療点数は同じ。
再診料は590円、数で人件費賄う。
時間をかけ、慎重に診療、納得いくまで説明したいが、出来ない。
対策は医療スタッフ強化しかないが出来ない。

看板だけの救急体制

救急チーム24時間体制は恐ろしく経費が人件費等掛かる。従って現状の診療点数では成り立たない。もう少し高く設定する必要がある。病院の財政事情が救急を弱いものにしている。

高額療養費

医療費上位1%の患者が全体の26%を使用している。その90%は結果死亡している。
低い患者は数としては75%、しかし20%位しか使用してない。
痛みをとるモルヒネの使用が日本は極度に少ない。終末医療に経費を掛ける仕組み。
生命絶対主義のスパゲテー症候群の是非を考えて欲しい。

第6章 医師の不安神経症

物忘れで受診し、無駄と分かっていても、万一にとCT,MRI検査を希望する。
他人の負担で大きなお金が使われる意識がそこのあるのかどうか。国民医療費への関心は低い。
医療は営利を目的にはしていない。奉仕の部分で、年間3000件以上訴訟が発生。
過剰な検査を行う背景にそれがある。

カルテ記入に膨大な時間を使う。見えない時間を患者に使っているのです。
誤診したらどうしょうかという不安が医師の不安神経症を生んでいる。

第7章保険制度

最新医療が健康保険制度を限界に近づかせている。
医療費の使われ方の地域格差=北海道の一人当たり年間46万円:沖縄25万円
最高1.8倍の格差がある。
保険料=富山県8.9万円:沖縄4.7万円 市で最高10万円:最低2万円
最高6.1倍格差

査定は適正医療か:過剰診療か
肺炎で1万円掛かる→本人負担3,000円、組合へ請求7,000円=レセプト点検(診療内容の審査):適正でない部分カットし5,000円支払い=査定金額年間2,000億円

患者中心の病院は差定率高く、レセプト中心の病院は差定率低い傾向。
健康保険組合は全国に5,500ある。しかし支払い基金にレセプト点検代行させている。削り屋という専門家を雇用してさえいる。それでも存在意義はあるのか。合理化が必要。

最後の医療事故から考える章

横浜市大病院の平成11年起きた患者取り違え事件=心臓と肺の手術を間違えた。一人の看護師が二人を運んだことから原因が生じた。患者と手術スタッフの面識度。看護士不足が背景。対策=識別バンド装着を。手術執刀医の事前患者訪問。超多忙の解消。

平成12年聖マリアンナ病院で3人の麻酔医連続死亡事件=寝る時間ない位働いていた事実。人口当たり欧米の30%でしかない。

平成3年東海大学病院で起こったカリウム殺人事件=安楽死是非。塩化カリウム製剤20CC注射(長男から楽にしてと再三懇願された)→懲戒解雇処分、懲役2年判決

平成11年2月 都立広尾病院点滴誤注射事件=消毒液ヒビテングルコネートを点滴。58歳女性死亡。看護士の不注意が起こした医療事故だが、病院は11日後警察に報告。事故直後には医師に看護師は報告していた。病院の事故隠し。
看護士は禁固1年、院長は懲役1年  裁判は医療ミスを隠そうとした院長をより厳しく非難。
背景=同じ透明の注射器が原因。毎年同様事故多発、色を変えること。型を変えること。
これを受け平成13年形態変えたコネクターがようやく発売された。

クリントン大統領宣言=医療事故削減50%宣言平成11年 過労、不眠対策改善措置
日本=医療費削減、小泉首相の三方一両損説:国民の安全への考え方相違

国民皆保険が誕生して40年、医療技術の日進月歩に比べ制度疲労を起こしている。
これからの方向性として著者は「都道府県単位に保険制度変え、競い合わせるべき」と結論している。カナダ、スエーデンは各州が医療を整備している。住民選挙のテーマになっている。
これを見習い我国も、道路か社会保障か知事選も面白いものにあり、住民意識も変わる。
自己負担に率、診療報酬これも県独自で決めるシステムです。


たしかに著者の主張の通り都道府県医療制度は格段に進歩を促すと思います。
時あたかも後期医療制度が都道府県単位の保険制度として導入されます。
これからの進捗を見守って行かなければならない。統制医療を行う既得権益チームがこれを手放すはずもない。政治家の勉強がそこまで進歩するか。そして国民意識がどこまで覚醒するか。これも見守って行かなければならない。


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