中村屋のボース

29歳…二人の熱情

著者中島岳志:私は29歳の2004年6月から12月にかけて本書を執筆した。
本書の主人公ラース・ビハーリー・ボースも29歳の1915年6月来日し12月に新宿中村屋に匿われた。

著者中島の20代は、ラース・ビハーリー・ボースと新宿中村屋との物語を書くためにあった。
インド、シンガポール、タイを回った。
ボースが育った場所、通った学校を訪れ、そして東京の原宿から新宿中村屋までのボースの通勤ルートを繰り返し歩いた。
追体験である。
学術的探究心を超えたボースへの愛、ボースの生涯は自分の人生への問いそのものであった。

ラース・ビハーリー・ボースはインドの代表的独立運動の指導者である。
インドは当時1910年代、イギリスの植民地統治下にあった。
イギリスに抵抗してインド独立運動を過激に進めるボースの首には多額の懸賞金が掛けられていた。
徹底的な追及にボースがインドに留まることは身の危険があった。
海外への逃亡しかなかった。

どこの国へ?
ボースの頭には、日露戦争に勝利し、国力を高めつつあった亜細亜の雄日本があった。
インド國カルカッタ港、日本郵船の讃岐丸乗船。1915年5月12日出発。


白水社発行  中島岳志著  中村屋のボース  335ページ


チャンダンナガル
カルカッタから35キロ北上したところにチャンダンナガルの町がある。
ラース・ビハーリー・ボースはここで生まれ育った。
現在町の大通りに彼の胸像が立つ。
郷里の英雄:誇りである。
気性が荒く頑固な彼は退屈な学校生活になじめず、退学させられる。
15歳のとき、「サラットチャンドラ」という本を読む。
1857年印度大反乱の記録だった。
イギリスへの敵愾心が沸き、印度開放運動の押しがたき念が生じさせられる。
表で植民地政府の事務員となり、裏では、強い信念と卓越した行動力でかれはまもなくインドを代表する独立運動の活動家に成長して行った。


国外退去命令

1915年11月28日 英国からの強いボース追放要請を受け、日本政府は日本からの退去命令を発した。
霞町警察署に出頭すると「5日以内に国外に退去すること」との命令を受けた。
期限は12月2日。


相馬愛藏の義憤
印度革命の士に対する政府の方針に国内世論は反発した。
義憤にかられたその一人に相馬愛蔵とその妻の黒光がいた。
12月1日午後9時 新宿中村屋に1台の車が着いた。
相馬愛蔵とボース一行は店内に飛び込んだ。
新聞ではボースが忽然と姿を消したこが報じられた。
憶測、噂が飛び交った。
中村屋から一歩も出なかった。
世間から完全に身を隠した。
ボース29歳。

中村屋のボース
愛蔵と黒光にボースはインドでの苦境、体験を熱心に話した。
熱心に日本語を学んだ。
両者は家族同然に関係になっていった。
ボース自ら腕を振るったインドカリーが振舞われた。
豪傑でありながら人の心を巧みに掴かむ誠に細やかな神経の持ち主だあった。
後に中村屋のインドカリーを食べるのはステイタスシンボルとまでなっていく。
愛蔵と黒光の娘俊子との結婚もあって、中村屋のボース物語は、インドカリー、恋と革命、雲隠れなど話題も多く、日本国民にロマン主義的心性を掻き立てる恰好の話となった。

1945年1月21日 インド独立を見ぬままボースは生涯を閉じた。
その7カ月後大東亜戦争は終結した。
その2年後1947年8月15日祖国インドは独立を果たした

約200年のイギリス統治下植民地からの独立だった。

1998年著者中島は哲子に会った。
初対面であった。
ボースと俊子の娘だった。
父の思い出話を語りながらなんと貴重な貴重な史料をすべてお貸ししますとの申し出があった。
感激に震えながら中島は自分がこの世に生を受けた意味があるとすれば、ボースと中村屋の物語を記すことにあると悟った。


以下は新潮社発行 稲垣武著「革命家チャンドラ・ボース」

1945年9月18日ボースの葬儀が杉並の連光寺で執り行われた。
占領軍を慮った寺も多かったが連光寺望月住職は「霊魂に国境はない」と快諾された。
多くの人々はボースの死を信じなかった。
ボースが生きてインドに戻ったら、ネールの対抗馬として甚大な影響力を振るい、危機に際してはあるいはネールに代わり指導者の地位についたかもしれない。
ボースは常々「インドの持つ様々な矛盾を根本的に解決するには独立後10年くらい独裁政治を敷かなければならない」と語っていた。
彼なら内政でも農地改革など強力に断行したのではないか。
デリー中央公園にボースの記念像が建てられている。
大きく伸びあがり右手は天を指す。
印度民族の融和と団結を叫んでいる。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック