東京オリンピック聖火リレートーチ物語続編  聖火トーチ神奈川を走る 

第1幕 平成25年9月22日 神奈川新聞22面 

49年前の聖火ランナー夢語る
地元から5輪選手を   伊勢原市元職員  黒田さん   
 


2020年五輪の東京開催決定-。
その朗報を、懐かしい思い出とともに受け止めた男性がいる。
49年前の東京五輪で聖火ランナーを務めた伊勢原市子易の元市職員、黒田義夫さん(68)。
「わが家の家宝」という当時の聖火トーチを眺めながら、「7年後には地元から五輪選手が出てくれたら」と胸を焦がす。

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 1964年、伊勢原町役場(当時)の税務課に勤務していた19歳の時、「20歳未満の職員」という条件に合った黒田さんに「聖火ランナーをやらないか」との話が舞い込んだ。
勤務終了後はほぼ毎日、「本番」に向け近くの野球場でランニングの練習を重ねた。

 走行区間は、二宮町から大磯町までの約1・5キロ。五輪開幕直前の10月7日、日の丸が描かれた白いランニングシャツ姿で、スタート地点に立った。

 「『走っている最中に聖火が消えることはない』と言われていたが、神聖な聖火が自分のところで途切れたらどうしよう」。
前のランナーが見えた時は、そんな不安がよぎっていた。

 聖火を受けたトーチを掲げ、白バイに先導されながらゆっくりとしたペースでスタート。
緊張しながら走り始めると、沿道で幼稚園児が旗を振りながら応援してくれる声が届いてきた。
いつしか不安も吹き飛び、気持ちよく完走することができた、と振り返る。

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 2度目の東京開催が決まった8日の早朝は、自宅でラジオに聞き入った。
「7年先だけど、もう一度五輪を見られるようなら本当にうれしいね」。
喜びをかみしめる一方で、2020年の五輪で再び走りたいという気持ちはないという。
「一人でも多くの人に同じような素晴らしい体験を味わってほしい」。次世代の活躍に期待を膨らませる。

 東日本大震災からの復興を開催意義に掲げた東京五輪。
伊勢原市の消防長を歴任した経験もあり、被災地への思いはひとしおだ。

 「震災では世界中の人たちにお世話になった。20年は、被災地が復興したことを世界に示してお礼をするチャンス」。先端に焼けた跡の残るトーチを手に、相好を崩した。


第2幕 聖火リレートーチ神奈川を走る

神奈川における聖火リレー準備状況

県はオリンピック東京大会国内聖火リレー神奈川県実行委員会」を設置した。
オリンピック東京大会国内聖火リレー 神奈川県内聖火リレー実施要項を定める。
走行隊形やトーチの持ち方などが細かく規定
神奈川県では、第1・第2 コースが県内を走行



・聖火リレーコース案の提示
■実行委員会連絡会議(昭和38 年9 月9 日)
第 3 回アジア大会の聖火リレーおよび国体における旗リレーを参考に、区間距離1~2 ㎞の範囲で策定
各市からの要望→検討へ

・第2 次実地調査の実施(昭和38 年12 月12 日)
県警交通第一課→明年1 月中の全コース踏査と聖火リレー試走の実施依頼

・聖火リレー県内全コース踏査(昭和39 年1 月22~24 日)
より具体的なコース名称等の確定、踏切等の問題も確認

・主たる議題は聖火リレーの試走→試走実施に向けた取り組みが本格化

■第1 回実行委員会(昭和39 年2 月13 日)
・聖火リレーの試走について、関係市町村からも賛成の意見が相次ぐ

■第2 回実行委員会(昭和39 年4 月10 日)
→腰越橋~県庁の区間で実施

○聖火リレーの試走

・試走に至る準備
試走に関する打合会議(昭和39 年5 月8 日)
『聖火リレー資料』『聖火リレー神奈川県試走実施要項』の作成等

・昭和39 年5 月27 日、試走実施

・県内聖火リレー試走検討会(昭和39 年6 月2 日)
県関係者のみによる試走結果検討

・県内聖火リレーの試走反省会(昭和39 年6 月15 日)
県下市町等関係者も含めた反省会

⇒こうした事前の取り組みを経て、聖火リレーの本番を迎えた。

以下実行委員会資料より…

聖火リレーの実地踏査と試走について

昭和38 年9 月県実行委員会の発足とともに、県警本部の協力を得て、全コースの実地踏査を行ない、中継地点を選定し実測距離等の基礎資料を得た。

以後沿道各市町及び管轄警察署とともに再三にわたり中継地点の可否、実測距離の確認調査を行ない全リレーコースの踏査を完了した。

県内聖火リレー走者については、各市町実行委員が地域の実情に応じて聖火の通過しない地域を含め県下全域から、公募、学校推せん等の選考方法により厳選し、5 月中旬県内走者の報告を受けた。

実行委員会においてリレーコースの決定を得、実施計画上の諸方策の確立と走者の訓練を目的として本リレーと同様な気候等すべての条件を満す時期である5 月27 日に、本リレーとまったく同様な状態のもとに特定区間の試走を実施した。

この結果は多くの教訓が得られ目的を充分に達した

オリンピック東京大会国内聖火リレー神奈川県実行委員会連絡会議

横浜市要望
原案のコースを三ツ沢に回す事が出来ないか。

(交通第一課で検討、後日協議)

橘町要望
原案第19 区間の近戸神社前バス停を西前川バス停とされたい。
なお、押切坂上バス停を押切坂下バス停とされたい。

(本件については、小田原市(欠席)及び二宮町と関連があるので後日協議したい)

茅ヶ崎市
旗リレー等の際には茅ヶ崎駅で引き継いだので駅で引き継ぎたい。

(組織委員会原案は1 級国道1 号線を東上しており、原則は迂回しないので立ち寄ることは不可)

(当館所蔵歴史的公文書「昭和38 年度 聖火リレー関係綴」[30-1-10-806])


オリンピック東京大会国内聖火リレー神奈川県実行委員会開催結果について(報告)

県内聖火リレーの試走について
(オリンピック課長)

ア 実施の時期は、組織委員会が予定する走者決定の時期が5 月末とされている関係上、県内走者決定を5 月上旬として下旬に予定したい。細部については4 月に委員会を開催し、協議願いたい。

イ 実施コースについては、全コースに渡るか、交通量を考慮して一部のコースか4 月に協議したい。

(交通一課小野警部)

ア コースについて、試走実施の際交通規制上東海道のう回路である東京沼津線が9 月竣工、1 級国道15 号線が5 月に改修ときく。

イ 交通規制については聖火リレーの円滑な実施に万全を期するため、相当強い規制を実施するが、通過沿道関係市町の協力を仰いだ上の、また沿道住民の民意が成果を迎える感激と協力を底辺とした規制でありたいので格別の周知方を要望する。

規制上の要望として、

(ア)実行委員会には
・箱根振動の無料開放(一定時間上り車両のう回路とする。)
・引継地点が私有地の場合における事前了承(会長名文書)
・定期バス運行上の了承(会長名文書)
・コース使用許可を津久井及び小田原警察署長あて申請すること。


(イ)関係市町には
・特に箱根町、鎌倉市、逗子市、横須賀市については観客の集合場所を考慮されたい。
・交通規制の広報について考慮されたい(立看板等については県警で用意し事前に設置する)。

(ウ)鎌倉市及び逗子市についてはリレーコース上に踏切箇所(私鉄)があるので、聖火の通過予定時間の安全通過措置を講ずるよう考慮願いたい。

(エ)横浜市については六ッ浦からの大船停車場金沢線をう回路として使用するが大型車両のガード通過が路面補修をせずには支障をきたすので、早急に補修措置等を講ずるよう考慮願いたい。

(オ)報道車両の取り扱いについて考慮願いたい。

(防災消防課石井係長)

(ア)聖火リレーコースの沿道においてリレー実施中火災が発生した場合の交通規制との関係。
(イ)聖火リレー隊を一時ストップさせられるか。

(議長)
事態に対処した適切な処置を講ずる。事故防止の啓蒙に努められたい。

聖火リレー実施にかんする各自治体の反応

(平塚市)市独自で試走をする考えがあるが、各市町が如何。

(横浜市)県民的盛り上がり、市民的盛り上がりも考えて実施された方がよい。図上作戦のみではどうかと思う。

(横須賀市)全国的な行事である大行事であり、念には念を入れ実施されたい。

(稲垣課長)実行委員会としては、交通規制上の問題解決を計りたいので実施を計画している。

(箱根町)町として試走をしたいが、箱根新道の無料開放を願えるか。

(小野警部)東京沼津線が9 月でないと出来上がらず、う回路線が確保されず、又静岡側の了解を得ることが困難でもあるので、通行車両全部を無料開放されることは公団側も不可能とされると思う。

(稲垣課長)試走を実施されたいとの意見が多数でありますから、腰越橋から県庁までの区間について実施いたします。期日は5 月27 日(水)として、関係する市町との細部打合せを近いうちに開催し、準備いたします。

試走を伝える新聞記事(おまけ)
五輪事故”の第1号

27日の聖火リレー試走会のおしまいに内山知事が選手から聖火のトーチを受け取る場面があったが、記念カップ授受のしぐさになれた知事は、これを右手でやや斜めに受けて左手を軽くそえたとたん「アッチチ」。
危うく投げ出すところだった。
握りしめるところだけ熱が伝わらないようになっているトーチの構造を知らぬ、とんだ災難。
たちまち人さし指に火ぶくれをつくって看護婦から包帯を巻かれる始末。
オリンピック事故の第1号となったがヤケドのいたみをこらえて「試走会が無事に終わってうれしい。
本番もしっかり頼みます」と走者たちを激励していた。

【参考資料】聖火リレー第2 コース・神奈川県内受渡地点一覧
月日
受渡順序
受渡時刻受渡地点
次の地点までの距離

10.6 1 発15.44 県境(箱根峠) 2.4
2 15.55 箱根郵便局前1.7
3 16.04 元箱根派出所前1.8
4 16.16 双子茶屋バス停前1.5
5 16.24 芦の湯温泉入口2.3
6 16.36 旭硝子箱根山荘前1.5
7 16.44 小涌園前1.6
8 16.53 かつら旅館前1.5
9 17.01 国際自動車車庫前1.3
10 17.08 大平台山神社前1.7
11 17.17 蛙の滝 1.5
12 17.25 上塔の沢バス停前1.0
17.30 箱根町役場
10.7 13 8.17 箱根町役場1.7
14 8.26 小田原市境2.2
15 8.38 上板橋バス停前1.9
16 8.48 小田原市役所前1.9
17 8.58 弘経寺前2.1
18 9.09 印刷局入口1.6
19 9.18 親木橋 1.2
20 9.25 石井石材店前1.8
21 9.35 押切坂下バス停前2.1
22 9.46 二宮郵便局前1.9
11
23 9.56 国府新宿郵便局前1.4
24 10.04 切通バス停前1.7
25 10.13 統監道バス停前1.5
26 10.21 大磯バイパス入口1.5
27 10.29 古花水バス停前1.9
28 10.39 四ッ角バス停前1.9
29 10.49 茅ヶ崎市境1.7
30 10.58 横浜トヨタデイゼル前1.6
31 11.07 茅ヶ崎青果市場前1.3
32 11.14 茅ヶ崎高校前1.7
33 11.23 上正寺前1.3
34 11.30 諏訪神社前1.2
35 11.37 羽鳥バス停前1.8
36 11.47 台町バス停前1.5
37 11.55 藤沢市役所入口1.7
38 12.04 藤ヶ谷バス停前1.7
39 12.13 竜口寺前1.8
40 12.23 江の島 1.9
41 12.33 腰越橋 1.8
42 12.43 行合橋道路公団ゲイト前1.9
43 12.53 鎌倉市営プール前2.2
44 13.05 長谷駅前1.9
45 13.15 公民館前1.8
46 13.25 小坪隧道東口1.5
47 13.33 久木西小路バス停前1.6
48 13.42 逗子海岸駅前1.6
49 13.51 葉山ヨットハーバー2.2
50 14.03 芝崎バス停前2.4
51 14.15 葉山小学校前1.7
52 14.24 長柄橋バス停前1.4
53 14.32 逗子市役所前2.0
54 14.43 東逗子駅入口1.6
55 14.52 沼間坂上バス停前1.6
56 15.01 新浦郷隧道南口2.0
57 15.12 追浜共済病院前2.2
58 15.24 金沢区役所前2.2
59 15.36 上西柴バス停前1.7
60 15.45 富岡会館前2.1
12
61 15.56 杉田バス車庫前1.7
62 16.05 屏風ヶ浦バス停前2.1
63 16.16 磯子旧道入口2.2
64 16.28 中村橋 2.4
65 16.40 伊勢佐木町1 デパート前2.4
16.52 神奈川県庁
10.8 66 9.10 神奈川県庁1.8
67 9.20 日本海事協会前2.0
68 9.31 岡野町バス停前1.5
69 9.39 三ッ沢競技場入口1.6
70 9.48 三ッ沢小学校前2.0
71 9.59 神奈川区役所前1.7
72 10.08 神奈川新町駅前2.0
73 10.19 日本石油前1.3
74 10.26 生麦バス車庫前1.7
75 10.35 鶴見区役所前1.9
76 10.45 池田町ガード北口1.4
77 10.53 川崎市役所1.4
11.00 県境(六郷橋)
(『オリンピック東京大会国内聖火リレー神奈川県内聖火リレー実施要項』より)

第3幕  聖火リレートーチ世界を走る

古代オリンピック発祥の地、ギリシャのオリンピアから採った火をトーチ・リレーによってオリンピック会場へ運ぶ「聖火リレー」は、カール・ディウムの発案により、1936年ベルリン大会から始められました。 

1964年東京大会の聖火は、同年8月21日にオリンピアで採火され、アジア地域12カ国を経て9月7日に沖縄へ到着。鹿児島、宮崎、千歳へ空輸され、9 月9,10日にスタート、日本全国を4コースに分かれてリレーし、10月7~9日に東京都庁に到着しました。
都知事室に安置された聖火は10月9日夜、皇居二重橋前で行われた集火式で合火され、翌朝の10月10日開会式当日、国立競技場へリレーし、聖火台に点火されました。


【海外リレー】
空輸総距離=15,508km、地上リレー総距離=732km(870区間)、参加走者総数=870人


【国内リレー】
空輸総距離=2,692km、地上リレー総距離=6,755km(4,374区間)、参加走者総数=100,713人※
(『第18回オリンピック競技大会公式報告書(上)』より)
  ※国内聖火ランナーは、正走者(1名)、副走者(2名)、随走者(20名以内)で編成。(『オリンピック準備局事業概要1964』より)



制作発信 社会保障・安全衛生コンシェルジェ 特定社会保険労務士 金丸亜紀雄


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