丹羽雄哉著「美しく老いるために…日本の医療・年金・福祉への提言」は高橋力也年金事務所長推薦の好著だ 

コープ出版発行 丹羽雄哉著 美しく老いるために  …日本の医療・年金・福祉への提言    263ページ  
    
                    

現武蔵野年金事務所長(元小田原年金事務所長)高橋力也氏の講演はiいつ聞いても感動的である。
日本年金機構地域型年金委員の研修会で初めてお聞きしたとき。
神奈川県社会保険労務士会西湘ブロック年金研究会の研修会のとき。
いずれのときも1瞬も聞き漏らせない中身の濃いお話だった。

岩手出身で東日本大震災との関わり、単身赴任で埼玉や小田原勤務への転勤のご苦労(5年間で埼玉、神奈川、東京と3か所異動)。
そして年金制度の歴史を誠に分かりやすくお話しし、年金業務を自身の天職と心得える溢れる使命感に思わず引き込まれる。

そんな尊敬する高橋所長さんの推薦した本が丹羽雄哉著「美しく老いる為に…日本の医療・年金・福祉への提言」。
何が何でも読まなくてはならない。
しかしこの本は絶版のため書店等で手に入らず八方手を尽くしたがどうしても難しかった。
やむなく強力なシンクタンクに活用している国立国会図書館に足を運び閲覧した次第。

……平成6年(1994)6月8日 初版第1刷の書き出しから、丹羽元厚生大臣の福祉への熱い思いが迸っている…

…国会議員になり15年、医療・年金・福祉という社会保障の分野に取り組み、厚生政務次官、自民党社会部会長、衆議院社会労働委員長を務め、平成4年12月厚生大臣に就任した。
「国民皆保険・皆年金制度」が誕生し早30年経つ。

これからいよいよ超高齢化社会化への過酷な急坂、ここをどう上るか重大な岐路に立っている。
人間の幸福は晩年の5年で決まると言われている。
感謝の気持ちを持ちながら晩秋を有終の美で過ごしたい。

目次

第1章 現代医療の3つの課題―――老人医療、ガン、エイズ

第2章 福祉の現場から――――精神薄弱、ハンセン氏病そして3つの訴訟

第3章 動き始めた年金改革―――年金問題1800日のドキュメント

第4章 連立政権の福祉政策を検証する―――前厚生大臣からの注文

第5章 私の医療福祉論―――21世紀への5つの提言

内容と感想

第2章では訴訟2例と血も涙もない厚生省高級官僚対苦しんでいる国民目線丹羽大臣との奮闘が綴られている。

▼予防接種禍東京集団訴訟

平成4年12月18日 着任間もない丹羽大臣が直面した予防接種禍東京集団訴訟は、国敗訴の判決だった。厚生省や大蔵省は当然強く控訴する方針。医師を娘に持つ後藤田官房長官や霞ヶ関官僚に絶大な睨みが効く石原官房副長官と丁寧に調整しつつ、問題を福祉の観点と大所高所の視点から控訴すべきでないと判断、大臣は官僚群と鬩ぎあい断固自身の方針を貫き、最後は上告断念を決断した。

▲生活保護訴訟:塩サバ事件

秋田県角館の老夫婦は生活保護を受給中、1本の塩サバを10切れに細かくし3日間かかって食べる、風呂は週に1回という超節約生活を続け、将来を心配し貯金を18万円貯めた。
これが生活保護法の資産活用の原則に触れ、当局は法に基づき生活保護費を大幅に減少させた。
塩サバ事件として大きな社会的反響を集め、裁判が注目されたが、判決は国敗訴。
世論は判決に喝采した。

しかし法を守る厚生省と大蔵省官僚群は当然控訴の大方針。
丹羽大臣は、法の趣旨は分かるが、血の通った厚生行政が求められ、13兆円にもなる厚生予算が国民の信頼を揺るがせかねない事案と捉え、孤軍控訴断念の方針をとり、霞ヶ関と闘う。
官僚たちとの付き合いも欠かさなかった大臣、山が好きな担当官僚とは直前に山に登っていたが、この担当も断固控訴派だった。夜も眠らぬ毎日の末、終に控訴断念を貫いた。
1993年当時、生活保護受給者は89万3,400人。1兆円の負担だった。

第3章は年金問題がテーマ

興味ある年金問題が内閣、政権与党、霞ヶ関・厚生省の間で喧々諤々質疑されそれぞれの思惑を交え、国民の将来生活がこうして決まってくると言う迫真のドキュメントとなっている。

第1幕 平成元年3月 自民党社会部会「厚生年金保険支給開始年齢の引き上げ」

丹羽雄哉議員が会長の自民党社会部会は真っ二つに分かれ、乱闘騒ぎまで起った。
年金法改正問題の焦点「支給開始年齢を現行満60歳から満65への引き上げ」がテーマ。
国政や各地の地方選挙結果も自民党は苦境にあった。こんな時期国民に不利なことこのうえない年金支給年齢を遅くする案など到底受け入れられない。

しかし、高齢化の進行、将来の財政負担、国民負担増を考えると、65歳への引き上げは避けて通れない重大な課題でもあった。
政府案では引き上げ実施時期は平成10年を予定されていた。

部会長の私自身は、この課題の重大性は誰より認識しているが、いかにも時期尚早と省幹部を説得していた。
部会の議論で7割が賛成となったところが実行決断時期との腹つもりだった。
改正案の国会提出期限は2月28日でとっくに期限は過ぎていた。

紛糾を極めた部会で乱闘は突然起った。
浜田幸一議員と笹川あきら議員が当事者。

笹川議員は「国民の信頼を得るなら年金支給年齢引き上げより、高齢者雇用の問題を先に議論し、雇用環境を整えるべきだ」と強く主張し、これに対し浜田議員は「労働部会など開く必要はない、引き上げ問題は部会長に一任すべきだ。
笹川さんのようなお金持ちは心配ないじゃかいか」これに笹川議員は体も鋭く反応して…浜田議員は当然のように体で応えた…
3月22日ようやく部会で了承されたが、夏の参院選惨敗もあり、年金法改正案は11月30日国会で修正削除され、65歳引き上げは見送られた。

第2幕 5年後 「平成5年年金改正の問題点」
  第1幕の日から1,800日が経た。厚生年金支給開始年齢引き上げ問題がようやく本格的に国会でも審議されようとしていた。


5年間…
平成4年12月丹羽雄哉議員厚生大臣就任。
宮沢政権が崩壊。8月に連立政権誕生。
5年前60歳定年の企業は5割だった。
現在、今後60歳定年制導入予定も含めると90%を占めるまでに前進していた。

12月20日連立政権与党政策幹事会で、年金改正プロジェクトが設置され、満額支給開始年齢65歳への引き上げが2001年から2013年にかけ、段階的に実施する案を得た。
60歳から64歳の間はほぼ半額の部分年金(報酬比例部分)が支給される。
賞与からも保険料を徴収する。失業給付との併給廃止等も盛り込まれた。

自民党年金改革検討委員会丹羽委員長見解…

疑問①部分年金

少子高齢化の日本において、労働力政策として高齢者の雇用確保は不可避である。
65歳までの雇用実現は国家の命題であろう。
高齢化の進行で65歳支給開始引き上げは避けられないなら、60歳から65歳までの間は雇用政策で対応するのが筋である。
部分年金での中途半端な対応は筋違いである。

疑問②保険料

このままでは厚生年金保険料率は30%にまで上昇する。
税と保険料の合計国民負担率が国民所得に占める割合は50%に留めるのが党の合意である。過重な保険料個人負担は制度への信頼を失い、しいては崩壊への危惧も高まる。

そこで提案①国民年金国庫負担率3分の1を2分の1にまで引き上げる道順を明らかにすべきである
65歳支給に軸足を移し、国庫負担を充実させ、保険料負担率と制度の財政上の安定化を図るのである。
財源は消費税が相応しい。年金への目的税化は国民の理解を得られると考える。

提案②引き上げ幅だが3年間で1歳引き上げだが、これを4年間で1歳引き上げに緩和させる。
景気も悪く、雇用状況も想像以上に悪化している厳しい現状から、65歳への定年延長への時間的余裕が必要だからである。
…この提言については平成13年度から3年ごとに1歳ずつ、段階的に定額部分が引き上げられ、平成25年度からは報酬比例部分も引き上げられ始めた。2013年問題として定年後の雇用も高年齢者雇用安定法で全員勤務継続する何らかの形を企業はとらなければ成らなくなった。

第3幕 公的年金一元化を考える支給開始年齢引き上げ問題とともにもう一つの大きな課題が公的年金一元化だ。
超高齢化社会を控え、現行8種類の公的年金制度が一元化され始めて真の公平で安定する公的年金制度となる。
政府の有識者懇談会での議論した案は3つある。
案1は8種類の被用者年金制度を全部新しい1つの制度にまとめる案。
厚生年金保険が大元。共済年金が国、自治体、私学共済、そしてJR,NTT,日本たばこなど7種類。これをまとめてしまうには時間もかかるし調整も大変である。
案2は公務員グループと民間グループに分割整理する案。
案3は制度間調整事業として進められている瀕死のJR共済を全被用者年金で救済する手法で、時間をかけても一元化の一つの姿として意識して今後も制度間事業を進める。
…3案とも一長一短あるが、全ての国民が等しく給付を受け等しく負担する考えに立って、全ての年金制度を統合一本化する方向を目指し最善の努力を傾けなくては成らない。

実現した提言…
平成9年4月1日 日本たばこ産業、日本電信電話、日本鉄道各共済は厚生年金保険に統合
平成14年農林漁業団体職員共済組合が厚生年金保険に統合

第4幕 年金情報を手軽に

社会保険事務所は300あるがここでの相談件数は1年間で1,867万件に達している。
杉並区にある中央年金相談所には一日平均3,200件相談電話が来る。
9秒に1件はベルが鳴る。
保険料納付、加入期間など何十年にも渡るその人の人生の状態に応じて年金額は単純なものではなく極めて複雑な仕組みで決まっていく。当然相談時間はかかる。

50歳を過ぎれば誰でも自分の年金はくになるところでもある。
そこで私は55歳になった全ての国民に自分の年金記録と金額見込みをお知らせすべきと考える。
自分のことで恐縮だが、恥ずかしいことに私の年金記録も危うく抜け期間が発生しかかった。厚生大臣就任し、会社の役員を辞めた。当然厚生年金保険を抜けた。
大臣就任中は兼職禁止。
そのまま年金は厚生年金保険喪失そのままで、国民年金にあらためて加入を知らずに放置したままだった。
数ヵ月後人事課の職員に助言され気がついた。
即国民年金に遡り加入したが、厚生大臣として様にならない事態だった。

今、全国民共通の基礎年金番号を設定し、適用漏れを防ごうとしている。
同時に国民が年金情報を手軽に得られるような行政サービスに努め、信頼を高めなければならない。

実現した提言…平成20年4月施行 改正「被保険者に対する情報の提供」
○国民年金法第14条の2
社会保険庁長官は、国民年金制度に対する国民の理解を増進させ、及びその信頼を向上させるため、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者に対し、当該被保険者の保険料納付の実績及び将来の給付に対する必要な情報を分かりやすい形で通知するものとする。

○厚生年金保険法第31条の2 同様趣旨改正条文

そして圧巻の第5章 私の医療・福祉論  21世紀への指針と5つの提言

丹羽提言1 医療・福祉に競争原理を導入せよ

無意味な規制が多すぎる。規制をはずし、思い切った自由化が必要である。
①医療方針を即時廃止する  医師の意欲を削ぐだけの医療方針など不要。質の向上を図れ
②診療報酬の規制を緩和
③措置制度を見直すこと、現状ではサービス向上が図れない
④医療機関の情報公開
⑤医療と福祉現場相互乗り入れを

丹羽提言2 介護保険制度を創設し導入せよ


高齢者の介護は全国民共通の課題であるからには、年金と同じように20歳以上全国民が介護保険に加入し保険料を負担する。
介護が必要な高齢者が的確なサービスをいつでも受けられるような介護保険制度を創設しょう。

丹羽提言3 年金の国庫負担率を2分の2にせよ
今のまま進めば、国民年金は平成27年(2015)に月額2万円に引き上げなければならない。
これでは未納・滞納がますます増加するだろう。
皆年金が泣く。
国庫負担率を3分の1から2分の1に高め、保険料の過重負担を避け、信頼をつなぎとめたい。
財源は消費税を充当する。増税分を年金に充てる目的税化ことで国民の理解を得られるだろう。

丹羽提言4  働く女性の環境を改善せよ
児童クラブ充実、企業も保育責任を。


実現した提言  
当時児童クラブ(学童保育)は日陰の事業であった。
革新系から強く国・地方自治体へ予算上の要求がありやむを得ず補助事業の位置づけで対応していた。
しかし国や自治体で少子化政策の目玉として採用されはじめ、平塚市でも平成11年度から補助事業でなく直接市が実施責任を担当し、事業の展開部分を各児童クラブへ委託する画期的な前進が図られた。

丹羽提言5  福祉のボランティア活動充実を図れ
福祉用具の開発が急ピッチだ。
介護の動的負担を軽くする絶対的ニーズに対応する。
ただ多種少量生産で精算が合わない。
私の厚生大臣就任中にこの福祉用具生産を後押しする法制度も成立した。
力はこのような福祉用具の開発に期待し、同様に大切なのが人間の笑顔という介護対応。
北欧のように行政に全て頼むのではなく、我国独特の人の和で介護対応したいものです。
日本的なボランティア活動に期待したい。
全国1万ある中学校単位に福祉センターを設置し、福祉のボランティア活動の拠点にするのである。

実現した提言
平成7年4月から育児休業中の保険料本人負担は免除される。(事業主負担は平成12年4月から免除になった)


高橋力也所長、丹羽雄哉元大臣に共通するのは限りなく社会保障、年金制度への愛着があり、使命感に満ち、知見を高める懸命なご努力をされていることである。

日本の社会保障、年金制度をこのような人物が支えているのである。
社会保険労務士として今後の活動へ大いに励みにもなり、刺激を受けた。



制作発信 社会保障・安全衛生コンシェルジェ 特定社会保険労務士 金丸亜紀雄

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