命がけ市役所職員、生活保護殺人事件と年金殺人事件の共通項から防衛策を講じたい

Ⅰ、生活保護殺人事件

発生

2005年5月20日

現場

長崎県長崎市高島町 高島行政センター


高島行政センター市民福祉係
長崎市高島町1728番地1
電話/095-896-3110(代表)
24年2月末日の人口 318世帯
男219人 女266人 合計485人

事件

長崎市高島町の市高島行政センターで、20日午前9時20分ごろ同センター谷崎健一郎さん(56)が、生活保護相談に訪れた男にナイフで腹部など2カ所を刺され、搬送先の病院で間もなく死亡した。

大浦署は現場近くの駐在所に出頭してきた同町の無職、大津秀敏容疑者(68)を殺人未遂容疑で緊急逮捕した。
調べでは、谷崎さんは大津容疑者からの相談を受けるため、センター1階の相談室内に2人で入ったところ、9時15分ごろ切り出しナイフ(刃渡り約14センチ)で刺された。
同署などによると、大津容疑者は昨年3月、それまで受けていた生活保護を打ち切られた。

谷崎さんとはこれまでも相談を通じて面識があり、前日の19日も相談に訪れていた

申請手続き説明中怒り出し一時帰宅
長崎市地域行政部によると、大津容疑者は昨年3月に収入が得られるようになり生活保護の受給対象から外れた。
事件前日、再受給の相談に訪れ、谷崎さんが応対したが、申請手続きの説明をしている最中に怒り出し、そのまま帰ったという。
20日再び来庁し、谷崎さんが話を聞こうとしたところ、何も言わず突然刺したという。


センター職員によると、事件当時、市民福祉課がある1階には職員8人がいた。
窓口を訪れた大津容疑者を谷崎さんが相談室へ案内。
密室にならないよう、相談室のドアは開けていた。

高島町は長崎港から南西約10キロの離島(高島)。
旧西彼杵郡高島町で、近隣の旧5町とともに1月4日、長崎市に編入合併した。
センターは合併するまでは町役場だった。
現在の職員は20人。
同センターは、今年1月に旧高島町が長崎市と合併するまでの町役場。
4月の機構改革で職員数が減り、現在は20人が働いている。
死亡した谷崎さんは、同センター市民福祉課の主査で、旧高島町の職員だった。


事件後の長崎市の対応  職員防衛策

長崎市では、県警の意向を受け、2004 年4 月に暴力団などの不当な要求・行為に対し、「不当要求行為等対応マニュアル」を作った。

また、同市では、2005 年5 月にも、市民福祉課の男性主査が生活保護の受給相談に来た男に、胸などを刃物で刺されて死亡する事件が起き、生活保護業務の安全管理マニュアルを作っている。

マニュアルには、危険発生時の警察への通報、職員の役割分担、暴言や暴力行為など、相談者の態度に合わせた職員の対応手順を定めた。

また、面接室のドアはカーテンに代え、テーブルも大きめにして相談者との距離を保つなど、施設面の改善も進めたという。
しかし、今回の事件が発生し、市幹部は、「これまで二つのマニュアルを作ったが、今回のように役所の外でいきなり襲われたら、どうしたらいいか分からない」と発言している。

>;Ⅱ、年金殺人事件

この事件については当ブログ 2007年5月18日(当ブログ第1回)号及び2013年3月13日(殉職職員命日)号で発信しておりますが、以下の事案内容です。



年金受給で窓口トラブル  刺された職員死亡

発生  1999年5月28日

現場  平塚市役所1階 保険年金課前通路ソファー



事件

平塚市浅間町の平塚市役所1階の保険年金課で28日、窓口を訪れていた同市中原1丁目、無職畑永永久容疑者(59)に腹部を果物ナイフで刺され重体となっていた鎌倉市岡本1丁目、同課主管反町道雄さん(47)が30日午前6時18分大量出血による多臓器不全などで収容先の病院で死亡した。

平塚署は畑永容疑者を容疑を殺人未遂から殺人に切り替え取り調べている。
畑永容疑者が反町さんから、受給資格を得るためには保険料の納付月数が不足していると説明されたのに腹を立て、「そんなことはないはずだ」などと言いながら、シャツの下に隠し持った果物ナイフで刺したらしい。
調べに対し畑永容疑者は黙秘している。

同課職員の話では、畑永容疑者はこの日午前10時頃窓口を訪れ、反町さんが納付月数の不足を告げ、それを補うために高齢任意加入の説明など50分ほど行った。

畑永容疑者は「支払う金がない、これまで納めた保険料を返してくれ」と求めたが、反町さんが「法的に無理です」と答えると「今後一切、年金に関する通知をよこすな」と言って一度は帰った。
午後2時過ぎ、容疑者は再び窓口を訪れ、「おれのこと覚えているか」と言って反町さんを呼び出し、窓口前の通路のソファーに座って話した。


二人を見ていた女性市民が、「様子がおかしい」と同課職員に知らせたため、同課職員が
近づいたところ反町さんが刺されていたという。
受給資格を得るには300月の納付が必要だが、同容疑者は免除期間を含めても49月不足していた。
反町さんは昨年10月に同課に異動し、主に窓口を担当していた。


Ⅲ、両事案の共通項

両事案とも男性対男性とか、本来なら国の事務を地方自治体が委任された形で遂行している福祉業務などの共通項があるが、ここでは現場での相談対応の共通項に着目する。

①再度の相談来庁であること

平塚市の事案では、午前に相談に来て、午後再び相談に来庁。
2回目で凶行に及んでいる。
長崎市高島町でも前日にも相談に来ている。
再度の相談来庁時に凶行に及ぶ。

連続した相談来庁は容疑者側の切迫状況からの行動であり、ナイフ等凶器を持参しているのである。
相当覚悟した行動である。
連続した相談者への対応には危機管理最重要度で対応すべきである。

②相談者と単独対応であること

相談には出来れば複数スタッフで対応したい。
更に上記①クラスの危険予想される場合は絶対複数にしたい。

③相談担当しての職員勤務歴が短い

平塚市の場合は保険年金課勤務は1年半程度である。
その前は水政課勤務で9年10月異動で当該セクションに勤務開始した。
高島町の場合は1月に町村合併があり新体制下数月後であった。
②③はともに組織的対応に弱点があったと考えられる。
凶行に及ぶ際、相手が組織的動きを見せつられると怯み、単独が相手だと隙をつけると考える。
組織的対応を相手に見せつけなくてはいけない。
:幹部:上司、ベテラン職員が前面に立ち職員とともに対応する姿勢を見せることが肝要である。

④相談者側の緊迫度相当高かった

高島町の場合前年まで生保受給していて就労し始めて廃止されたケース。
この場合収入認定され不足が生じれば生保は継続する。
能力活用という保護受給の条件を満たす。
収入がオーバーしたので廃止されたのだろうか。
つらい就労よりはるかに保護の方が楽であるから、人柄によりこちらに寄りかかる。
これはつきはなさなくてはいけない。

平塚の場合、刑務所帰り直後、60歳前といっても正常に職につける状況でなく生活維持困難なケースだった。
両方ともはっきり食べていくのは相当困難性が高い緊迫度Aクラス要注意体操者だった。


Ⅳ、相談対応:危機管理通説編



職員を守る対策

① 早期に兆候をつかむ。

行政を対象とした暴力の発生を未然に防ぐためには、その発生の可能性を、初期の段階で把握しておくことが大切である。
その方策として、必要な情報を一元的に収集・整理し、関連部署へ配布して職員に徹底する、「情報収集・処理体制」を整備することが望ましい。

② 組織的な対応

物事を一部署や一個人で処理することなく、組織が一丸となって対応することが必要である。
その為に一例として以下のことを整備することが望ましい。

③ 部外機関等との連携


行政を対象とした暴力に適切に対処するためには、警察、弁護士会を含めた組織的な対応が欠かせない。
その為、専門部署に以下の業務を実施させる。
(
A) 対策に関する関係機関等との連絡・調整
(B) 日常の情報交換
(C) 予防の段階での調査依頼
(D) 威嚇効果(警察の立会・市役所等への巡察・首長等の身辺護衛)の発揮

④ 施設・装備・レイアウト等の整備

市役所等の施設等について、次の着意を持って見直すことが必要である。
(A) 首長等の官舎に機械警備システムの導入
(B) 首長等に送られて来る郵便物等の開封対処場所、対処要領の整備
(C) 脅迫電話等の情報収集(録音装置等)
(D) 来客等の対応場所・導線・対応要領
(E) 首長等の安全確保の観点から入り口から首長室等への導線の検討
(F) 市民対応窓口とその他の部署との導線
(G) 首長・窓口担当者等の避難経路等の確認・検討

⑤ 教育訓練

Ⅴ、実務に苦労するケースワーカーや査察指導員から…

個室」となると逃げ場がない。
そのため、お客を奥に座らせてケースワーカーや査察指導員は卓を囲んで「個室」入口側、すなわちドア側に座るのがセオリーとなる。
ケースワーカーが単身でお客と「面接室」に籠もらないというのも基本である
(お客さんは家族や「や」っぽい義兄弟だったり、複数の場合もある)。
この辺の感覚は「警察と同じ」である。
しかし、日中のケースワーカーは自分の担当客を電話やカウンターで相手したり、病院や介護機関、民生委員などと連絡を取ったり、その日にしなくてはならないデスクワークをこなしつつお客の家へ訪問調査に回って歩いたりと、相当忙しい。
お客はひっきりなしなので、査察指導員も忙しい。
そんな中で、どうしてもお客と面接するために「一人で」面接室に入らざるを得ない状況が頻繁に起こるのだ。
事件が起こったケースでは面接者が「一人で」あったことが多い。


Ⅵ、問題を起こす相談者の危機管理傾向

①ケースワーカーの説明が自分の意に沿わないとなると、すぐに大声を出し、こちらを威嚇する、暴言をしつこく吐く、

②大声で威嚇するのみならず、手近なものを投げつける

③体力・体格に自身のある者は具体的な暴力行為に打って出る

④その場を納めて帰らせても、当日ないし2~3日のうちに再び事務所に来て同じ事を繰り返す

⑤市長の秘書関係や市会議員関係や警察などに電話して虚偽の事実を申し立てる…

Ⅶ、過去の地方自治体職員被害

、事例と同じ長崎市では…

2007 年4 月17 日午後7 時50 分ごろ、現職の長崎市長がJR 長崎駅前にある選挙事務所前の歩道で、短銃を持って待ち伏せしていた男に背後から数発撃たれ、その後、搬送された病院で死亡した。
容疑者
は暴力団幹部で現場で逮捕された。
犯行動機は、現時点では市とのトラブルでの市の対応に、一方的に不満を募らせた結果、凶行に及んだ可能性が高いと報じられている。

最近、行政機関に言い掛かりをつけ、公共工事への参入や金銭を要求する行為や、行政に不満を持つも
のの短絡的な加害行為で、行政の対応窓口の担当者や関係議員、首長等が被害にあうケースが増加して
いる。

栃木県鹿沼市 

2001 年10 月 栃木県鹿沼市環境対策部の幹部職員が、産業廃棄物運搬業者らに逆恨みされ拉致・殺害された。
検察側は公判で、11 年間に渡る市と業者のなれ合い体質を指摘したが、関係者は口をつぐみ、真相はいまだに明らかになっていない。

Ⅷ、平塚福祉の防衛対策(当時)

①来庁した相談者に対し相談専門の面接指導員体制樹立

担当地域制の個々のケースワーカーが対応するのでなく、ベテラン職員が面接指導員として専門的に対応。
地域性を相談来庁者には適応させず全市対象を面接相談員が対応した。
査察指導員と一部始連絡相談し共通理解をしながら組織的対応とした。

面接指導員制度は国の基準にもなく、県下各市町村にも例がない平塚市独自の制度だった。
職員は通常保護者80-ケース程度を担当するが、面接指導員分のケース分80は皆が同意し他のケースワーカーに割り振って対処した。
面接指導員は福祉6法を猛烈に勉強し、査察指導員と年金、医療、雇用、労災、障害等他方活用をお互い議論深め切磋琢磨し知識を磨いた。
本当に困っている方には迅速で的確な対応が必要である。
なにしろ命に直接係わる、他の部課では考えられない緊迫した職務であった。

②相談室机の出入り口に職員、奥の方に相談者を配置

何か発生した場合逃げ口を常に確保した。
つまり必ず暴力事案が発生するとして対応した。
万一発生など生易しい段階ではなく必ず暴力事案が発生すると決めつけての対応だった。

③机やカウンターを相談者との間に遮断物として構築した

前述のように必ず暴力事案が起こるのであり、安全配慮から相談者との距離を作る遮断物が必置だった。
机、カウンター等を必ずはさみ相談に対処させた。
平塚の保険年金課の事案はこれと相違し、通路でソファーに横座りという危機管理上問題がある相談対応だったのは残念である。

④複数対応と防御用具の準備

面接指導員は初めて来庁した相談者用であり、既に生保の受給対象者は各人の住む住所の地区担当ケースワーカーが対応する。
この場合も複数とした。
出来るだけ腕力のある大柄の職員が一緒に話を聞いた。
職員の手のそばにはパイプ椅子など、いざというとき武器になるもの、相手を力づくで押さえつける武器用具を常時準備配置しておいた。
男性だけでなく女性から灰皿などが飛んできたこともあった。
女性保護者宅で包丁を手に追いかけられたケースワーカーもいた。
常在危機の意識を皆持っていた。

⑤職員間の連帯感助成、飲ミニケーション確率

職員数は9人の保護係だった。
野球、ソフトボールは9人のスポーツ。
これだと、昼休みは皆で練習した。
ついには庁内対抗ソフトボール大会で優勝してしまった。
常勝PL学園と言われた消防本部を決勝で負かした。
肉体と訓練では負けていても「チームプレー」だけは勝っていた。
つらい仕事を仲間意識とスポーツで爆発させた時代。


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この記事へのコメント

山田
2016年07月25日 18:26
そこまで一生懸命に職員も申請者に対して優しく相談を受け入れてないのが実情
相手に不快感を確実に与えてる
殺されても仕方ないと思う
相手は、職員が思ってる以上、毎日どうして生きるか悩んでるのだから
職員殺されるまで一生懸命仕事したところで、何も残らない
大臣や知事に職員幹部は、汚職や賄賂、横領など全国で何十万とやってる
下っ端の職員が安賃金で殺されてまでする仕事でないということ

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