パニック障害闘病と梅の花に自分を重ねて…第5回湯河原文学賞最優秀賞受賞作「梅一夜」を読んで

祥伝社発行  平野洋子著 「梅一夜」を読んで

さがみの小京都と言われる湯河原で部屋数6室だけの小さな温泉旅館の女将のパニック障害闘病記と湯河原温泉の静かで明るいたたずまい:季節感溢れる年中行事の織り成すあやが独特のやさしい文体からにじみ出る。
第5回湯河原文学賞最優秀賞受賞作品。

NHKテレビ朝ドラの「どんと晴れ」は岩手の老舗旅館の女将を目指して悪戦苦闘する一人の横浜出身者の物語であるが、湯河原の旅荘船越の女将である主人公はある日突然体調に異変が起きる。このまま死んでしまうのではないかといいう位の動悸、息切れ。
お客さんや従業員を相手にそれこそ隅々まで気を配る、早朝から深夜まで気の休まるときもない重労働。お客さんへの暖かいおもてなしの答えとして、「ありがと」という感謝の言葉をいただくことが、その重責の支えだった。
近くの医者ではなんでもない、唯の疲れみたいな診断。しかしそれからもたびたび発作は起こり、死んでしまいたいとさえ思うようになって行く。
見かねた友人から専門医を紹介され受診、診断結果はパニック障害であった。

パニック障害の患者は、青天の霹靂の如く突然に、動悸などの自律神経症状と強い不安感に襲われる。以下出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

自律神経症状には、めまい、動悸、手足のしびれ、吐き気、息苦しさなどがある。
不安感には、漠然とした不安と、死ぬのではないか、気が狂うのではないかなどの恐怖感がある。患者は、これらの症状に非常に困惑し、救急受診をすることも多い。
しかし、これらの症状は、特別な処置がなくとも、多くは1時間以内に、長くとも数時間のうちに回復する。これが「パニック発作」である。

広場恐怖
パニック発作の反復とともに、患者は発作が起きた場合にその場から逃れられないと思われる状況を回避するようになる。
回避される状況としては、電車や飛行機、歯科、理・美容室、レジを待っている時、道路の渋滞など、一定時間特定の場所に拘束されてしまう環境や、ショッピングモールなど人込みの中などがある(他にも、人によって広場恐怖の種類は様々である)。
さらに不安が強まると、患者は家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもある。このような症状を「広場恐怖(アゴラフォビア)」という。広場恐怖の進展とともに、患者の生活の障害は強まり、社会的役割を果たせなくなっていく。そして、この社会的機能障害やそれに伴う周囲との葛藤が、患者のストレスとなり、症状の慢性化をさらに推進していくこととなる。

疫学的には、生涯有病率1.6%–2.2%と言われる。男女ともに起きる疾患だが、女性の罹患率が2倍程度といわれる。
その原因について従来は、心理的な葛藤が根本にあると思われてきた。しかし、近年認知行動療法の有効性が明確となり、心理的「原因」よりも、症状に対する患者の対処が症状進展のメカニズムとしては重視されるようになった。また薬物療法の有効性も確認されており、生物学的因子があるという意見も強くなっている。
なお、パニック障害にうつ病が併発する場合が少なくはなく、日本では約3割、欧米では約5–6割といった統計も出されている

女将=ドラマ「どんと晴れ」でも先代女将は病に倒れている。残された息子の恋人が主人公である。息子は母親の大好きだった大きな野に咲く1本の桜の前でその無念を晴らしたいと恋人と話し合うシーンは印象的である。それ程きつい業務をどこの女将もこなしている。
湯河原船越荘の女将は、医師から「本来なら休養を取るべきです。しかし暮れと新年の忙しい時期休むわけにも行かないでしょう。投薬で様子を見ましょう。キチンと薬を飲むことです」と
指導される。

梅の季節がやってくる。多くの観梅客を迎える梅の宴。春には奥湯河原の桜並木。初夏になると神輿が温泉街を練り歩く湯かけ祭り。…湯河原の温泉街の風情ある行事が季節感豊かに描かれていく。同時に女将の病状の進行状況も語られていく。いつもなら湯をいっぱい掛けてビショビショになるのに何も出来なくなった自分。もう女将として限界:ついに従業員に涙を流して告白した。番頭も板前さんも仲居さんも皆暖かく「女将さんゆっくり休んで、心配しないでください、後はやりますよ」と好意的になってくれたのを期に、女将は休養を取ることになる。
星ケ山さつきの里へのドライブ、万葉公園のほたるの宴、城山のあじさい、夏には吉浜海水浴場となるべく寝たきりにならないよう、やっとの思いで外出する女将を湯河原のモネの絵のような色彩感で自然が迎えてくれる

でも一向に病は治らず、自殺願望が強烈になってきてしまう。死に場所探しにもでかけてします。そんなとき夫の子供をあやすような「一人では不安だろうが、俺と一緒だろ、ずっとこれからも一緒だよ」というやさしさに接し、大きな声で泣き出してしまう。
やっさ祭りには出かけられなかったが、吉浜の花火大会には気乗りがしないが出かけることに。ドーンという花火音の連続と豪華な火花にいつか高揚した気分になる。
秋になり山々がたわわに実ったミカン一色になる。
そのころ女将は徐々に平静を取り戻し始める。起きて家事にも向かえるようになる。
闘病1年、薬と死ぬ思い、良い日悪い日の繰り返しだが、美味しいとか面白いとか感情を
取り戻したのだった。いつか湯河原の秋景色にみとれ、カメラを持ってくるのだったねという女将に夫は湯河原にいて湯河原の写真かいと笑う。

山と海、川に囲まれた自然が美しい、人情も厚い湯河原。
2月、梅林は夜になるとライトアップされる。その初日夜、「梅一夜」
が行われる。
山を埋め尽くした梅が夜空に五色に輝き、数千個のキャンドルの明かりが幻想的な空間を醸し出している。女将は一番旅館が多忙な時間だけにこの梅一夜を見るのは初めてだった。
彼女は息を呑み、すばらしさに体中が震えた。感動が一気に体を包み込む。凍えるような寒さも忘れ、彼女は気がつく。…全ての人間は自然に生かされているのだ。生きる資格なんて必要ないんだ。生かされているなら,命ある限り生きていこう。そう気がつく。


四季彩のまち  さがみの小京都ゆがわらが梅カラーで裏表紙を飾る。
62ページの小本だが実際のご苦労はいかばかりかと思いますが、余りにも美しい湯河原の自然と季節感あふれるの年中行事の移ろいに思わず引き込まれてしまいました。
おそらくこの文章のような、やさしい暖かいおもてなしを船越荘で女将業発揮しておられたのでしよう。

この病気は、私も相談などの事例から、心のやさしい、感受性豊かな、そして責任感が強い方に現れることが多いのではないでしょうか。
忙中閑を作れるような姿勢でないと、無理が無理を呼び、心も体も限界まで行ってしまう。
人柄から何か息抜きを作れない人も多いのですが、ぜひ抜くことをお勧めしたい。
本人が性格から固まってしまうのも多いケースですので、周りの人が組織なら忠告しなければいけないでしょう。独身の若者に心の病が多いのもそういうことなのです。
女将は幸いなことに理解ある夫と従業員、医師などが味方になりました。
そして何にもまして豊かな自然あふれるゆがわらのまちが支えてくれたのでしょう


http://jobranking.net/44/ranklink.cgi?id=1346


なお、うつ病について就労との関わり等本ブログ6月7日「超長時間労働の衝撃」にて私の思いを発信しておりますのでご覧頂ければ幸いです。



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心のケア 福祉相談 無料相談メール ナディアス
2011年04月17日 16:50
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